プラハで下がり続ける気持ちを挽回するために向ったのは、電車で一時間の距離にあるクトナーホラ(Ktona Hora)という町。
ここへ向かうことを決めたのは、プラハのインフォメーションセンターでセドレツ納骨堂のパンフレットを見てその異様さに興味が湧いたのでした。
クトナーホラと隣のセドレツの町にはいくつか有名な教会があり、ユネスコの世界遺産に登録されています。そんな中でも本物の人骨一万人分で内部を装飾されたこの納骨堂は有名です。
着いたのは石造りの整った町並みが美しい小さな町。
まず向かったのはセドレツ納骨堂。
聖なるゴルゴダの丘の土が撒かれたとされるこの修道院墓地には、約四万人が眠るとされ、その中の一万人分の人骨で内部が装飾されています。
入り口には早速人骨の聖杯。
この神聖な土地に眠りたいと切望した人々の人骨がある場所なのだから、中はさぞかし厳かな雰囲気なのだろうと思っていたのですが。
観光名所というだけあって多くの人が訪れていて、狭い内部で写真を撮りまくる人々。
係員は入り口でチケットや土産物を売るためにいるだけで、装飾に使われた人骨とどれだけふざけた写真を撮ろうが注意されることもない。
「静かに」という注意書きはまったく意味をなさず、観光客の笑い声と話し声が響く、さながらテーマパークのようでした。
加えて、全体的に埃があったり蜘蛛の巣があったりと清掃が行き届いていないのが見てわかる。
無数の頭蓋骨が並べられた薄暗い堂内の真ん中に、人骨で作られたシャンデリアやデザイナーのサインがあるという現実離れした空間は、確かにコミカルにも見えてくる。
自分もその異様さに魅かれて見学に来たわけで、はしゃいで写真を撮る人たちと同じ観光客。
なので偉そうな意見を言える立場ではないんですが、あまりに薄っぺらい客寄せ空間になっているあの状態は、とても哀しかった。
残念な気分を引きずりながらも、お昼ごはんを食べにレストランへ。
魚料理が無性に食べたくてトラウトのグリル(時価)を食べました。
魚料理は日本が一番という結論。いや、美味しかったですけどもね。
気を取り直すこともできずにせっかく来たし、とついでに立ち寄った大きな教会、聖バルボラ教会。
実はこの聖バルボラ教会は 「クトナーホラの聖バルボラ教会のある歴史地区」として世界遺産に登録されるほど素晴らしい教会。ついでに、とか言うレベルではなくて必見です。
遠くから教会のフォルムを見つけた時点で目を離せなくなるこの感じ。
サンクトペテルブルグの血の上の教会で感じた、あの虚無感と絶対的な存在感を思い出す。
圧倒的な存在感と内部の美しさは写真では伝わらないかもしれないけど、この数日の鬱々とした気持ちがぶっ飛びました。
立ち寄って、本当によかった。
その後バルボラ教会をバックに写真を撮ってくれたおじさんも、
教会から帰るときのバス停で正しいバスがどれなのかを教えてくれたおばあちゃんも、
そのバスの運転手も、
その周辺で会った人々がみんなとても気持ちのいい人たちだったのは、この教会の発する力が呼び寄せたんだろうか。
こうして気持ちよくチェコに満足したわたしは、隣の国のポーランドへ向かいます。